理想の音読教材
科学編
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「漢文素読」教育の復活
今、音読暗唱教育が流行しています。
最近は、小学校でも教科書とは別に詩のプリントを音読用の教材として渡したり、百人一首や『枕草子』の「春はあけぼの」などを暗唱させたりしています。
また、市販の音読用の教材もあります。斎藤孝氏の編による『理想の国語教科書』などが代表的なものでしょうか。また土屋道雄編『日本人を育む小学国語読本』などもあります。
音読暗唱教育は、いわば、かつての「漢文素読」教育の復活です。江戸時代から明治の初めころまでは、各地に漢学塾というものがあり、『論語』など中国古典の素読が盛んに行われていました。「漢文が読める」ということが、当時のエリート知識階層と一般庶民を分ける分かれ目であったのです。
突如として意味がわかる
よく言われていることですが、小さな子どもに漢文などを読ませても理解できるわけがありません。ところが、素読を繰り返しやっていると、あるとき(というのは、かなり成長してからですが)、突如として意味がわかる時が来るのだということです。
これは科学的見地からも説明が出来ることで、小学校低学年くらいの子どもは暗記力に優れていて、抽象的な思考力・理解力は高学年あたりから発達します。ですから、かけ算の九九などは低学年で覚えさせるわけです。幼い子どもが言語を習得しやすいのも、いわば「体で覚える」というような、抽象的な思考や理解とは別の記憶力があるからです。昔は、その記憶力を用いて、『論語』といった儒教的な道徳を体に染み付かせたのでしょう。
しかしながら今日の音読暗唱教育は、単に「国語力を高める」という観点から行われているだけで、その意味では不満が残るものです。せっかく「漢文素読」教育を復活させたのなら、かつての「漢文素読」教育が日本のエリート階層に儒教道徳を染み付かせたように、音読教育でも子どもたちに単なる言葉以上のものを身に付けさせたい、と考えるのは自然なことでしょう。
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科学を「素読」する
それでは、今、子どもたちが身に付けるべきものとは何でしょう。
その一つが「科学」であることは間違いありません。今日における科学の重要性は言うまでもないでしょう。科学のことがわからなければ、この世界で何が起こっているか本当に理解しているとは言えません。わけのわからない人や商品に騙されることもあるかも知れません。
また、子どもが小さいうちから科学的な言葉を知っていることも大事なことです。例えば、「酸素とは何か」を科学的にきちんと理解することは必ずしも容易ではありませんが、わたしたちが「酸素」という言葉を日常的に使って何の困難も感じないのは、小さいときから聞き知っている言葉だからです。初めは理解できなくても、そんな言葉をいろいろ覚えて、後で勉強が深まってからわかるというのは、漢文の素読とそっくりです。
その意味で、「科学」というのは、意外にも「素読」と相性のいい分野なのです。
科学の「古典」を探す
そこで、「漢文素読」のように読める科学の古典はないかと探してみました。
一つの有力な候補は、クリスマス・レクチャーを始めたことでも有名なファラデーの『ロウソクの科学』でした。けれども内容や用語が古すぎるのが難点です。せめて十九世紀末くらいのものでなければ、そのまま読ませても今の子どもには誤解を与える可能性があります。
ところで、「漢文素読」教育の良い点は、意味はわからなくとも、言葉そのものに独特の調子があって覚えやすいことでした。覚えているからこそ身に付き、後年になって意味がわかるのです。
その意味で、科学者の書いたものは、内容はすぐれていても、言葉のリズムまで考えているとは期待できないのです。
そうなると、結局、自分たちで作るしかありません。
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五・七・五・七・七で科学を覚える
こうして出来たのが、
『元素百人一首』
のシリーズです。
短歌形式にすれば五・七・五・七・七のリズムが初めから備わっていますから調子よく覚えられます。またカルタのように遊ぶことも可能です。さらに、三十一文字というのは、ある程度まとまった考えを人が覚えるのにちょうどよい長さです。あまり短いと内容が限られてしまいますし、長いと覚えられません。五・七・五・七・七にすると、ある程度複雑な内容が楽に覚えられて、覚えた後は具体的にイメージしやすいのです。
現在、すべての内容が無料で試し読みできます。全部を覚える必要はないので、拾い読みをしていくつか覚えるだけでも理科や科学が得意になること請け合いです。
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